冬のボーナス前と後、転職するならどちら?退職前に確認しておきたいポイント

11月。冬のボーナス支給まであと数週間というタイミングで、転職を希望する企業から最終面接の案内が届いたとします。
ボーナスを受け取るまで転職活動を慎重に進めるべきでしょうか。それとも、ボーナスを受け取れない可能性があっても、選考を優先すべきでしょうか。
誰にとっても正しい答えが一つあるわけではありません。ただし、自分に合った判断をするための考え方はあります。
要点
多くの場合、転職活動は今の段階から続けつつ、現在の会社の賞与支給要件を満たす日以降に退職日を設定するのが現実的です。「退職を申し出る日」と「雇用関係が終了する退職日」は別の日付です。
一方、ボーナスのために転職を先延ばしにする前に、魅力的な求人を逃す可能性、転職先の給与を早く受け取れるメリット、転職先での初回賞与への影響も比較しましょう。
具体的な取扱いは雇用契約や就業規則によって異なるため、まず自社の規定を確認することが重要です。
押さえておきたいデータ
■ 2025年の冬のボーナスは平均約42万円
厚生労働省によると、2025年の年末賞与の平均支給額は42万4,889円で、前年比2.8%増加しました。
これは、2025年11月〜2026年1月に賞与を支給した、従業員5人以上の事業所における労働者1人当たりの平均額です。また、賞与を支給した事業所に所属する労働者の割合は86.5%でした。
なお、全国平均であり、個々の企業の支給額を示すものではありません。(厚生労働省)
■ 退職の申し出から雇用終了までの期間は、法律上は原則2週間
民法第627条では、期間の定めのない雇用契約の場合、原則として退職の申し出から2週間で雇用契約が終了すると定められています。
ただし、就業規則でより長い申出期間が定められている企業もあるため、退職を検討する際は、自社の規定も確認しておきましょう。(民法・大阪労働局)
■ 2025年の転職者数は330万人
総務省統計局の「労働力調査」によると、2025年に就業していた人のうち、過去1年以内に前職を離れた転職者は330万人でした。
また、転職や現在の仕事に加えて別の仕事をすることを希望する人は、1,023万人に上りました。(総務省統計局)
■ 2026年8月の有効求人倍率は1.18倍
厚生労働省によると、2026年8月の有効求人倍率は1.18倍(季節調整値)でした。
有効求人倍率とは、仕事を探している人1人に対して、何件の求人があるかを示す指標です。(厚生労働省)
冬のボーナスが必ず支給されるとは限らない理由
日本では、企業に賞与の支払いを一律に義務付ける法律はありません。賞与が支給されるかどうか、またその金額や条件は、雇用契約や就業規則によって決まります。
常時10人以上の労働者を使用する企業には、就業規則の作成が義務付けられています。賞与について定める場合は、その内容も就業規則に記載しなければなりません(労働基準法第89条)。
小規模な企業で働いている場合も、まずは雇用契約書や労働条件通知書で賞与の支給条件を確認しましょう。
退職を考える際に特に注意したいのが、「支給日在籍要件」です。
これは、賞与の支給日に在籍している従業員だけを支給対象とするルールです。1982年の大和銀行事件では、最高裁判所がこの要件の有効性を認めています。
この要件が適用される場合、賞与の算定対象期間の大半を勤務していても、支給日前に退職すると賞与を受け取れないことがあります。ただし、実際の取扱いは就業規則の文言や個別の事情によって異なります。
また、支給対象を判断する基準日が賞与の支給日より前に設定されている場合や、年俸に賞与が含まれている場合などは、取扱いが異なる可能性があります。
そのため、退職時期を決める前に、まずは自社の賞与規定を確認しておくことが大切です。
退職を申し出る日と退職日は異なる
退職を考える際に重要なのは、「退職の申出日」と、雇用が終了する「退職日」の2つです。
支給日在籍要件では、原則として退職の申出日ではなく、退職日が賞与支給日の前か後かが問題になります。
ただし、賞与額が人事評価によって変わる場合、支給前に退職を申し出ることが評価や金額に影響するかどうかは不確実です。金額の決定方法を先に確認しましょう。
ステップ1:まず就業規則を確認する
企業には就業規則を労働者に周知する義務があります(労働基準法第106条)。賞与と退職に関する規定を読み、次の点を確認しましょう。
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支給日:冬のボーナスが支払われる正確な日付
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支給対象となる基準日:支給日当日なのか、別の基準日なのか
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査定対象期間:どの期間の勤務実績が賞与に反映されるのか
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支給額の決定方法:給与の一定月数なのか、業績・評価によって変動するのか
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退職申出の期限:退職希望日の何日前に申し出る必要があるのか。極端に長い期間でなければ就業規則に従うよう、労働局は案内しています。
不明な点があれば、人事担当者に中立的な聞き方で確認するか、厚生労働省が設置する無料の「総合労働相談コーナー」を利用することもできます。
ステップ2:ボーナス支給日から逆算して予定を立てる
日付が分かったら、ボーナス支給日から逆算して考えましょう。
以下は、支給日が12月10日、支給日在籍要件あり、退職申出は1か月前、支給後に退職を申し出る場合の例です。
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時期 |
対応の目安 |
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11月 |
面接を継続し、入社日の調整が可能か早めに確認する。 |
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退職を申し出る前 |
書面で内定通知を受け取る。日本では採用時に労働条件の明示が義務付けられ、一部は書面等で明示する必要がある(労働基準法第15条)。 |
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12月10日(支給日) |
賞与が実際に振り込まれたことを確認する。 |
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12月11日(退職申出日) |
就業規則に従って退職を申し出る。1か月前申出の例では、退職日は1月中旬ごろになる。 |
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12月中旬~1月中旬 |
業務の引継ぎを行い、残った年次有給休暇を取得する。年末年始は営業日が少ない点に注意。 |
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退職日以降 |
例えば1月下旬や2月から新しい会社で働き始める。 |
別の方法として、退職日を賞与支給日より後に設定したうえで、支給前に退職を申し出れば、転職先への入社を早められることがあります。ただし、退職の申出が賞与査定に影響しないか、事前に確認が必要です。
また、見落としやすい点が2つあります。
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年次有給休暇:年次有給休暇は労働基準法第39条に基づく権利です。引継ぎと残日数の消化を合わせて計画し、早めに日程を調整しましょう。
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年末調整:国税庁によると、年の途中で退職した人は、12月給与の支給後に退職した場合など一部の例外を除き、原則として年末調整の対象になりません。その年の所得がどのように処理されるか、転職先の給与担当者にも確認してください。
ステップ3:ボーナスと、転職を待つことのコストを比較する
ボーナスの金額は目に見えますが、転職を先延ばしにすることで生じるコストは分かりにくいものです。次の項目を書き出して比較しましょう。
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比較する項目 |
確認したいこと |
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現在の会社の冬のボーナス |
税金や社会保険料などを差し引いた受取額はいくらか。固定額か評価連動か。 |
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転職先の求人 |
入社が1~2か月遅れても募集が続くか。 |
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給与差 |
入社が1か月遅れるたびに、給与面でいくら差が生じるか。 |
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転職先で最初に支給される賞与 |
初年度に全額・一部・不支給のどれになるか。 |
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キャリア上のタイミング |
プロジェクトや昇進査定の時期を踏まえ、早い転職と遅い転職のどちらが有利か。 |
簡単な比較方法として、2つのシナリオを同じ基準で計算します。例えば金額は税引前で揃え、比較期間は転職先での入社1年目の終わりまでとします。
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シナリオA(ボーナスを待つ):現在の会社の冬のボーナス+遅い退職日までの現職給与+遅い入社日以降の転職先給与+その入社日を基にした転職先の初回賞与
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シナリオB(早めに転職する):早い退職日までの現職給与+早い入社日以降の転職先給与+その入社日を基にした転職先の初回賞与
入社時期を遅らせたからといって、転職先で最初に受け取る賞与が必ず少なくなるわけではありません。
賞与の支給規定や査定対象期間によっては、入社日が異なっても同額になる場合もあれば、差が生じる場合もあります。
入社時期を決める前に、それぞれの日程で初回の賞与がどのように計算されるのかを転職先に確認し、受け取れる賞与の総額を比較しましょう。
ただし、賞与を優先するあまり、転職のチャンスを逃してしまう可能性にも注意が必要です。
入社時期を大幅に遅らせると、転職先の企業がほかの候補者の採用を検討することも考えられます。
2026年8月の有効求人倍率は1.18倍でした(季節調整値、厚生労働省)。ただし、これは全国平均の数値であり、個々の企業が入社時期の延期に応じてくれるかどうかを示すものではありません。
ステップ4:入社時期について採用企業と率直に相談する
希望入社日を早めに明確に伝えることで、採用企業も受入れ計画を立てやすくなります。例えば、次のように伝えられます。
「現職には適切な時期に退職を申し出て、十分な引継ぎを行いたいと考えています。就業規則を踏まえると、最短の入社可能日は[日付]です。この日程でご調整いただくことは可能でしょうか。」
企業側がより早い入社を求める場合は、放棄することになる賞与額を踏まえ、提示条件の調整が可能か丁寧に相談してみてもよいでしょう。早い段階で正確な金額を示して相談することが大切です。
次の仕事が海外勤務の場合
海外への転職には、住居や行政手続きなど、さらに多くの準備が必要です。
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賞与制度は国・企業によって異なります。例えばシンガポール人材開発省によると、Annual Wage Supplement(AWS、いわゆる13か月目給与)は法定の義務ではなく、雇用契約や労働協約によって決まります。支給前後に退職する人にも同じ考え方が適用されます。支給時期・支給要件・入社初年度の対象可否を確認しましょう。
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退職を申し出る前に、就労許可の取得時期を確認しましょう。シンガポール人材開発省によると、Employment Passのオンライン申請は10営業日以内に審査結果または進捗通知が示されますが、追加書類が必要な場合はさらに時間がかかることがあります。申請中の不確実性を避けるため、就労許可やビザの承認を待ってから退職を申し出ることも検討しましょう。
まとめ
冬のボーナスは重要ですが、転職時期を決める材料の一つにすぎません。就業規則を確認し、退職の申出日と退職日を分けて計画したうえで、賞与額と転職を待つことによる影響を総合的に比較しましょう。早めに準備し、採用企業と率直に相談することで、ボーナスとキャリアの両方を大切にした選択がしやすくなります。
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よくある質問(FAQ)
Q. ボーナス支給前に退職すると、冬のボーナスはもらえなくなりますか?
雇用契約と就業規則によります。支給日在籍要件があり、支給日前に雇用が終了する場合は、受け取れない可能性があります。1982年の最高裁判決は、この種の要件の有効性を認めています。支給日と異なる基準日が設定されていないかも確認してください。
Q. ボーナスの支給前に退職を申し出ても、賞与を受け取れますか?
退職の申出と雇用の終了は別です。支給日に在籍していればよいという規定で、退職日がその後であれば、受給対象となる可能性があります。ただし、査定で支給額が決まる場合は、事前の退職申出によって不確実性が生じることもあります。評価方法を確認し、不明点は人事担当者に相談しましょう。
Q. 日本では、退職の何日前に申し出る必要がありますか?
期間の定めのない雇用について、民法第627条では申入れから2週間で雇用が終了するとされています。一方、就業規則で1か月前など、より長い期間を定めている場合があります。労働局は、その期間が不当に長くない場合は就業規則に従うよう案内しています。有期雇用契約には異なる規定があるため、契約を確認してください。
Q. 日本で転職するのに最適な時期はいつですか?
全員に共通する最適な時期はありません。ボーナスの支給日、退職申出の期限、採用企業の希望、自身のキャリア計画によって異なります。賞与額と転職を遅らせることのコストを比較して判断しましょう。
Q. 転職先では、入社1年目から賞与を受け取れますか?
転職先の規定と査定対象期間によります。査定期間の途中で入社した場合、初回賞与が減額されたり、支給されなかったりする可能性があります。内定を承諾する前に確認しましょう。
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著者について
Valerie Ong(ヴァレリー・オン) / Reeracoen Group Regional Head of Marketing
Valerieは、Reeracoenのアジア全域におけるコンテンツ制作と市場分析を統括しています。各国の人材紹介コンサルタントと連携し、採用データ、給与水準、労働市場の動向を、日本やアジア各国の企業・求職者が実務に活かせる情報として発信しています。年次Salary Guide、Hiring Pulse、Hiring Manager Surveyなど、Reeracoen独自の調査も活用しています。
言語に関する注記:本記事は英語で執筆され、日本国内の求職者向けにReeracoen Japanが日本語版を公開しています。
参考文献
1. 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年2月分速報」(2025年年末賞与を含む、2026年4月8日)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2602p/dl/pdf2602p.pdf
2. 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」(2026年10月2日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76397.html
3. 総務省統計局「労働力調査(詳細集計)2025年平均」(2026年2月13日)
https://www.stat.go.jp/info/mail/pdf/20260213_no1836.pdf
4. 総務省統計局「労働力調査 用語の解説」
https://www.stat.go.jp/data/roudou/pdf/yougo_kaisetsu.pdf
5. e-Gov法令検索「民法」(第627条)
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
6. e-Gov法令検索「労働基準法」(第15条、第39条、第89条、第106条)
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
7. 大阪労働局「退職・解雇・雇止めに関するよくあるご質問」
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/yokuaru_goshitsumon/jigyounushi/taisyoku.html
8. 茨城労働局「会社を辞めたいのに辞めさせてくれない場合」
https://jsite.mhlw.go.jp/ibaraki-roudoukyoku/yokuaru_goshitsumon/shurouchu/worker_d/qa_wyametai.html
9. J-Net21「賞与支給日に在籍していない従業員にも賞与を支払う必要があるか」
https://j-net21.smrj.go.jp/qa/hr/Q0657.html
10. 国税庁「タックスアンサー No.2665 年末調整の対象となる人」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2665.htm
11. 厚生労働省「総合労働相談コーナー」
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html
12. シンガポール人材開発省「勤務期間が12か月未満の場合のAWS受給資格」
13. シンガポール人材開発省「Employment Pass申請」
https://www.mom.gov.sg/passes-and-permits/employment-pass/apply-for-a-pass
免責事項
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