海外に移住しなくても築ける国際キャリア:日本にいながらグローバル経験を積む方法

海外ビジネスを行う日本企業の85.2%が、「海外業務を担える人材が不足している」と回答しています。
ここでいう人材不足とは、単に第二言語を話せる人が足りないという意味でも、外国人材が不足しているという意味でもありません。
海外に関わる業務を実際に担える人材そのものが不足しているということです。
もしあなたが、「本格的な国際キャリアを築くには、まず海外に移る必要があるのだろうか」と考えている日本人プロフェッショナルなら、この数字は一度立ち止まって考える価値があります。
なぜなら、考えるべき問いそのものが変わってくるからです。
より重要なのは、「どうすれば海外赴任できるか」ではありません。今、日本にいる自分が、自社や次の会社が求めている“海外業務を担える人材”になるには、何が必要なのか。 そこから考える方が、より実践的です。
データから実際にわかること
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JETROでは、「海外ビジネスを担える人材」を、日本人・外国人を問わず、貿易や海外展開などの海外ビジネスに対応できる人材と定義しています。 海外ビジネスを行う日本企業のうち、85.2%がこうした人材の不足を感じていると回答しています。 また、これとは別に、88.9%の企業が、海外ビジネスを担う人材の能力や適性が、自社の求める水準を十分に満たしていないと回答しています。 (出典: JETRO, FY2025 24th Annual Survey of Japanese Companies' Overseas Business Development, n=3,063 for the headcount figure, n=2,814 for the capability figure) |
この2つは、それぞれ別の調査結果として捉える必要があります。
85.2%という数字は、「海外ビジネスを担える人材の数が不足している」ことを示しています。一方、88.9%という数字が示しているのは別の課題です。
つまり、すでにこうした業務を担っている人材がいても、その能力や適性が企業の求める水準に十分達していないケースが多いということです。
市場全体で見ると、この2つの結果から、海外ビジネスを担える人材の人数不足と、すでにその業務を担っている人材の能力・適性不足という、2つの異なる課題が見えてきます。
ただし、本調査ではこの2つの回答者層がどの程度重なっているかまでは示されていないため、2つの数値を一つの指標としてまとめて捉えるべきではありません。
このデータからはわからないこと
このデータからは、各企業がこの人材不足をどのように解消すべきか、特定のキャリア選択によってこのようなポジションに就ける可能性が高まるのか、あるいは特定の行動によって海外ポジションが保証されるのかまでは分かりません。
この調査が示しているのは、あくまで市場全体の状況です。特定のキャリア戦略を示すものではなく、本記事でもそのような主張をするものではありません。
また、JETROの定義には重要なポイントがあります。企業が不足していると回答している「海外ビジネスを担える人材」には、日本人と外国人の両方が明確に含まれています。
そのため、この結果を「外国人材の不足」に限ったデータとして捉えるのは適切ではありません。日本国内で働く日本人プロフェッショナルも、この定義に含まれる人材層の一部です。
「関わったことがある」と「経験がある」は同じではない
シンガポール拠点とのメールにCCで入っている、四半期に一度リージョナル会議に参加する、海外の同僚と時々英語で話す。こうした経験も、もちろん海外業務との接点ではあります。
ただし、それだけで十分な「国際経験」になるわけではありません。 それを実際以上に大きな経験として捉えてしまうと、後で面接などで「自分が具体的に何をしたのか」を説明しようとしたときに、話せる内容がほとんど残らないことがあります。
重要なのは、自分自身がどこまで責任を持って関わったかです。より実質的な経験と言えるのは、たとえば次のようなものです。
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地域横断プロジェクトの一部を主導した
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複数市場の関係者が関わる課題を解決した
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日本本社と海外子会社の間を直接調整した
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海外の顧客やサプライヤーとの関係を担当した
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商品、業務プロセス、キャンペーンなどを別市場向けに調整した
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自分の役割を具体的に説明できる成果に貢献した
一つのシンプルな基準は、面接で「誰と働いたか」「どの会議に出たか」ではなく、「あなた自身は具体的に何をしたのですか」と聞かれたときに、はっきり答えられるかどうかです。
もし答えが「いいえ」であれば、それは「経験」というより、まずは海外業務に触れた段階だと考えるのが自然です。それ自体は十分なスタート地点ですが、実際以上に大きな経験として見せる必要はありません。
日本企業の中で、国際経験を積める場所
国際的な業務経験を積める機会は、社内の限られた領域に集中していることが多く、すべての人に同じルートが当てはまるわけではありません。大切なのは、選択肢を覚えることではなく、自分の会社のどこに、すでにこうした機会があるのかを見つけることです。
海外子会社との連携
日本本社と海外拠点の間で行う調整や連携業務は、正式な異動を伴わなくても始められることが多く、国際業務に関わる入口の一つです。
海外の顧客・サプライヤーとの業務
営業、アカウントマネジメント、調達、品質管理、物流など、海外の取引先と直接関わる業務では、職種名に「海外」や「国際」と付いていなくても、実質的なクロスボーダー経験を積むことができます。
国をまたぐプロジェクト
複数の国の関係者やチームが関わるプロジェクトであれば、短期間のものでも、自分が担当した具体的な役割を説明できるなら、十分に国際経験となり得ます。
地域横断で担当する業務
マーケティング、人事、財務、IT、オペレーションなどの職種でも、日本以外の市場を一部でも担当していれば、国際経験につながります。国内業務が中心のポジションであっても、担当範囲の一部に海外市場が含まれていれば対象になります。
輸出入・貿易関連の業務
輸出入や国際事業に関わる業務、たとえば海外営業、国際事業開発、貿易関連の物流などは、海外向け業務に直接関わる経験を積む機会になります。
短期赴任・出向
短期赴任や出向の機会があれば、短期間でも集中的に国際経験を積むことができます。ただし、こうした機会だけが唯一の選択肢だと考える必要はありません。
今の仕事で国際経験を積み始めるには
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まず、自社がどこで海外と関わっているのかを整理します。海外と接点のあるチーム、顧客、サプライヤー、子会社、プロジェクトなどを洗い出してみましょう。
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その中から、自分が現実的に責任を持って担えそうな具体的な業務を1つ見つけます。 「もっと国際経験を積みたい」と漠然と考えるのではなく、自分が主体的に関われる範囲を明確にすることが重要です。
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上司に相談するときも、「海外業務にもっと関わりたい」ではなく、「○○の調整業務を自分が責任を持って担当したい」 など、具体的に何を担いたいのかを伝える方が、実際の機会につながりやすくなります。
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実際に担当することになったら、その業務の中で自分がどこまで責任を持っているのかを明確にしておきましょう。そうすることで、後からプロジェクト全体ではなく、自分自身が果たした役割を具体的に説明しやすくなります。
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業務を進めながら、どんな課題があり、自分が何をして、その結果どうなったのかを簡単に記録しておくこともおすすめです。後から記憶をたどるのではなく、自分の経験を具体的な実績として整理できます。
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一定期間取り組んだら、どの能力を身につけられたか、次にどの能力を伸ばす必要があるかを振り返ります。国際経験は、受け身で待つのではなく、意識的に積み重ねることで次の成長につながっていきます。
日本にいるだけでは十分でない場合
社内で国際経験を積むことには、現実的な限界もあります。努力を続けていればいつか必ず機会が得られると考えるのではなく、その限界を冷静に見極めることも大切です。
たとえば、次のような状況は一つの判断材料になります。
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海外関連の業務は存在していても、上位職に集中しており、今の自分の立場ではなかなか担当できない
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責任ある業務を任せてほしいと何度も伝えているのに、実際にはその機会が得られない
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自分が経験したい特定の市場や職種について、今の会社では構造的に経験を積むことが難しい
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社内で得られる国際経験を、現実的にこれ以上広げるのが難しいところまで来ている
こうした状況に当てはまるからといって、社内で経験を積むことに失敗したという意味ではありません。今の会社で得られる経験には一定の限界がある、ということです。
そして、その限界をきちんと認識し、新しい経験が得られなくなった段階で必要以上にとどまり続けないことも、国際的なキャリアを主体的に築いていくうえで重要な判断の一つです。
Reeracoen Japanとこれからのキャリアを考える
今の会社で国際的な経験を積む方法を探している方も、転職や海外でのキャリアを検討している方も、Reeracoen Japanのコンサルタントが、アジア各国に広がるReeracoen Groupのネットワークを活かしながら、今後のキャリアの選択肢を一緒に整理します。
よくあるご質問
本格的な国際キャリアを築くには、まず海外で働く必要がありますか?
必ずしもそうではありません。JETROの調査では、海外ビジネスを行う日本企業の多くが、海外業務を担える日本人・外国人の人材不足を感じています。
日本にいながらでも、実際に責任を持ってクロスボーダー業務に関わることができれば、国際キャリアを築くうえで十分な第一歩になります。
「国際業務への接点」と「国際経験」の違いは何ですか?
国際業務への接点とは、海外関係者とのメールにCCで入る、時々会議に参加する、海外の同僚と日常的に接点を持つ、といった状態です。
一方、国際経験とは、プロジェクトの一部を自分が責任を持って担当する、国をまたぐ課題を解決する、市場間の調整を行う、具体的な成果に貢献するなど、自分自身の責任と役割を説明できる経験を指します。
今の会社で国際業務を担当すれば、将来の海外ポジションは保証されますか?
いいえ。JETROのデータは、海外業務を担える人材の不足が広く存在していることを示していますが、特定のキャリア上の行動が特定の結果を保証することまでは示していません。
ただし、実質的なクロスボーダー経験を積むことで、海外業務を担える力を、より具体的に示せるようになります。
自社に明確な「海外部門」がない場合はどうすればいいですか?
多くの企業では、正式な海外部門がなくても、特定の顧客、サプライヤー、輸出業務などを通じて海外との接点があります。
「海外部門」という名前だけで探すのではなく、自社がどこで海外と関わっているのかを整理することで、組織図だけでは見えにくい機会が見つかることがあります。
このような経験を積むうえで、英語力を最優先にすべきでしょうか?
英語力だけではありません。言語力は重要であり、JETROの調査でも、多言語人材を採用する理由の一つとして挙げられています。一方で、より広く見えてくるのは、海外向け業務を一連の流れとして実際に担える人材の不足です。そのため、必要なのは英語力だけではなく、実際の業務を責任を持って進める力や判断力も含まれます。
今の会社で得られる国際経験に限界があると判断する目安はありますか?
たとえば、海外関連業務が上位職に集中していて自分にはなかなか機会が回ってこない、責任ある業務を何度希望しても任せてもらえない、自分が経験したい特定の市場や職種に今の会社では構造的にアクセスできない、といった状況です。
これらは絶対的な基準ではありませんが、「続けていればいつか機会が来る」と考えるだけではなく、今の環境で本当に経験を広げられるかを見極める材料にはなります。
著者について
Valerie Ong(ヴァレリー・オン) / Reeracoen Group Regional Head of Marketing
Valerieは、アジア全域におけるReeracoenのコンテンツおよび市場分析を統括しています。Reeracoenの専門性の高い採用コンサルタントと連携し、採用データ、給与水準、労働市場の動向を、企業やプロフェッショナルが実務に活用できる情報として発信しています。また、Salary Guide、Hiring Pulse、Hiring Manager Surveyなど、Reeracoen独自の調査データを活用しています。
参考文献
JETRO. (2026, February 12). FY2025 [Preliminary] 24th Annual Survey of Japanese Companies' Overseas Business Development.
https://www.jetro.go.jp/news/releases/2026/fb2468413e5d19f0.html
免責事項
本記事は、公開時点で信頼できると考えられるJETROの公開情報をもとに、Reeracoenが作成したものです。一般的な情報提供および教育目的のものであり、個別のキャリアに関する専門的なアドバイスを提供するものではありません。
本記事で紹介している実践的なアドバイスは、JETROの調査結果を参考にしたReeracoen独自の見解・提言であり、JETROの調査によってその有効性が検証されたものではありません。また、実際の結果は業界、企業、職種などによって異なります。
キャリアに関する重要な意思決定を行う際には、個々の状況に応じた情報や助言もあわせて検討してください。市場環境は変化する可能性があり、本記事の内容は公開日時点で入手可能な情報に基づいています。




