国境を越えて働ける力をどう示す? 企業が実際に見ているプロジェクト経験

国際的なポジションへの転職を目指す候補者と接していると、採用コンサルタントはある共通した傾向に気づきます。
「国をまたぐプロジェクト経験はありますか?」と聞くと、よく考える前に「ありません」と答える人が少なくありません。
ところが詳しく話を聞いていくと、実は該当する経験をすでに持っていたというケースがよくあります。その背景にある思い込みは、ほとんど同じです。
プロジェクトマネジメントという正式な肩書きがあること、国際プロジェクトの担当者として明記されていること、あるいはどこかに「グローバル」と付く仕事でなければならない、と考えてしまうのです。
こうした思い込みがあると、本来は十分に関連性のある経験まで候補から外してしまい、面接で話すべきか迷うことにもつながります。
本記事では、どのような経験が国をまたぐプロジェクト経験として評価されるのか、逆にどのような経験は弱いのか、そして自分の経験のうち何を面接で伝えるべきかを整理します。
Reeracoenの「Singapore Hiring Manager Survey 2025/2026」では、国際的なポジションを採用する企業が重視する研修分野として、プロジェクトマネジメントが52.4%で2位となり、デジタル・AIスキルに次ぐ結果でした。
ただし、この調査が測定したのは、企業がプロジェクトマネジメントを一般的な研修分野としてどの程度重視しているかであり、以下で紹介するような非公式なプロジェクト経験そのものを検証したものではありません。
ここからは、正式なプロジェクトマネジメントの肩書きを持たない候補者について、こうした調査結果が実際の採用現場でどのように表れるかを、Reeracoenのコンサルタントによる採用支援経験をもとに解説します。
「国をまたぐ経験」に含まれるもの
国際的な仕事では、時差や職種、場合によっては言語の違いを越えて調整する場面が多くあります。
その際、必ずしも誰かが正式なプロジェクトマネジメントの肩書きを持っているとは限りません。国内業務が中心の仕事であっても、海外の同僚、顧客、サプライヤーと直接仕事をした経験があれば、それは国際的な協働経験です。
企業が見ているのは、職種名に「国際」や「グローバル」が入っているかではなく、自分が具体的にどのような役割を果たしたのかを明確に説明できるかどうかです。
正式な肩書きがなくても評価される経験の例
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海外の同僚、顧客、サプライヤーと、業務や成果物について調整した経験。継続的な担当でなく、単発のプロジェクトでも構いません。
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異なる市場や仕事の進め方を持つ相手に合わせて、コミュニケーション方法や情報の伝え方を調整した経験。
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異なるタイムゾーンにいる相手とのやり取りを含むスケジュール管理や業務の引き継ぎを担当した経験。正式な担当でなくても対象になります。
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国内業務が中心の仕事の一部であっても、海外チームや海外顧客の日本側の窓口を担当した経験。
面接で伝えるべき経験をどう選ぶか
海外の相手とメールをした経験がすべて、面接で詳しく話す価値のあるエピソードになるわけではありません。判断の目安は、その経験の中で自分が何かを調整する必要があったかどうかです。
たとえば、相手と前提や仕事の進め方が異なるために、伝え方を変えた、スケジュールの進め方を工夫した、認識のずれを解消した、といった対応が必要だったでしょうか。もしそうであれば、規模が小さくても、正式な担当でなくても、面接で伝える価値があります。
一方、定型的なやり取りで、自分側に特別な調整が必要なかったのであれば、それも国際的な経験ではありますが、面接のエピソードとしては弱くなります。無理に話を広げるよりも、より具体的な例を探す方が効果的です。
同じ6か月の経験でも、伝え方でここまで変わる
たとえば、商品切り替えの期間に6か月間、日本のチームと海外サプライヤーの間の窓口を非公式に担当していた候補者がいたとします。
正式なプロジェクト担当という肩書きはありません。この経験をうまく伝えられないと、「国際プロジェクトの経験は特にありません。海外のサプライヤーとメールで少しやり取りした程度です」となってしまいます。
これでは、面接官が評価する前に、自分から本来 関連性のある な経験を小さく見せてしまうことになります。
一方、同じ6か月の経験でも、次のように伝えることができます。
「商品切り替えの際、日本チームと海外サプライヤーの調整を担当しました。相手のチームとは時差があり、私が慣れていたものより直接的なコミュニケーションスタイルだったため、スケジュールの伝え方を調整しました。
また、時差を考慮してあらかじめ余裕を持たせていたことで、スケジュール上の衝突に早めに気づき、出荷の遅延を防ぐことができました。」
事実そのものは同じです。
ただし後者は、面接官が評価できる具体的な材料があり、企業が見ている「異なる環境に合わせて対応する力」も明確に示しています。
この経験を説得力のある形で伝えるには
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国をまたぐ仕事だったという事実だけでなく、自分の対応によって何が実現したのかを具体的に伝えましょう。何を達成できたのか、何を解決したのか、どのような改善につながったのかを説明します。
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自分が実際に担った役割を正確に伝えましょう。調整を主導したのか、一部を担当したのか、それとも特定の問題を解決したのか。曖昧に「関わりました」と伝えるより、具体的に説明する方が信頼性は高まります。
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国をまたぐ業務だからこそ行った工夫があれば伝えましょう。たとえば、コミュニケーションスタイルを変えた、時差を考慮して進め方を調整した、異なる商習慣に対応した、といった点です。
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短期間の経験や非公式な担当だった場合も、実際以上に大きく見せず、そのまま伝えましょう。小さな経験でも具体的に説明できる方が、曖昧に誇張した話より説得力があります。面接では具体的な内容を詳しく聞かれることが多いため、誇張した経験は説明が続かなくなります。
企業が実際に確認しようとしていること
Reeracoenの採用・紹介支援経験では、企業がプロジェクトマネジメント経験を見る際、主に2つの点を確認していることがあります。
1つは、普段の国内環境と同じ前提が通用しない状況でも、適切に仕事を進められるか。
もう1つは、自分と同じ前提を共有していない相手とも、明確にコミュニケーションを取れるかという点です。
これは、調査結果が実務上どのような意味を持つかについてのReeracoenの解釈であり、調査自体が直接測定した内容ではありません。
この2点を示せる具体的なエピソードが1つあれば、関連性の薄い経験を数多く並べるよりも説得力があります。
Reeracoen Japanで経験を整理し、次のキャリアにつなげる
Reeracoen Japanのコンサルタントが、海外や複数の国・地域に関わる仕事を目指す際に、これまでの経験を企業に伝わる形で整理し、アピールするお手伝いをします。
よくある質問
国際的なポジションを目指すには、正式なプロジェクトマネジメント経験が必要ですか?
いいえ。ReeracoenのHiring Manager Surveyでは、プロジェクトマネジメントは企業が重視するスキル分野の一つですが、企業がその評価の背景で具体的に何を見ているかまでは調査していません。Reeracoenの採用支援経験では、企業は正式なプロジェクトマネジメントの肩書きがあったかどうか以上に、国をまたいで効果的に調整できるかを重視する傾向があります。海外の同僚、顧客、サプライヤーとの非公式な調整経験も、その力を示す具体的な経験として評価されることがあります。
日本でしか働いたことがない場合、どのような経験が「国をまたぐプロジェクト経験」になりますか?
国内業務の一部であっても、海外の同僚、顧客、サプライヤーと直接仕事をした経験は該当します。重要なのは、仕事全体が正式に国際業務だったかではなく、自分が具体的にどのような役割を果たしたのかを明確に説明できることです。
自分の経験のうち、どれを面接で伝えるべきかはどう判断すればいいですか?
その経験の中で、コミュニケーションの取り方、スケジュール管理、前提の違いによる認識のずれの解消など、自分側に実際の調整や工夫が必要だったかを考えてみてください。調整が必要だった経験であれば、規模にかかわらず伝える価値があります。一方、定型的なやり取りで特別な対応が必要なかった場合も経験ではありますが、面接のエピソードとしては弱くなります。
限られた国際経験は、大きく見せた方がいいですか?それとも正直に伝えるべきですか?
正直に伝えましょう。小さな経験でも具体的に説明できる方が、実際以上に大きく見せた話よりも、企業には信頼性が高く伝わります。また、面接では詳細を確認されることが多いため、誇張した内容は具体的な質問に対応できなくなる可能性があります。
企業が重視するデジタル・AIスキルとは、どのような関係がありますか?
ReeracoenのHiring Manager Surveyでは、デジタル・AIスキルとプロジェクトマネジメントは関連はあるものの、別の分野として扱われています。最も重視された研修分野はデジタル・AIスキルで、プロジェクトマネジメントがそれに続きました。両方を示せる候補者は強みがありますが、「国際的に活躍できる」と一括りにするのではなく、それぞれを具体的な経験として分けて示すことが重要です。
著者について
Valerie Ong(ヴァレリー・オン) / Reeracoen Group Regional Head of Marketing
Valerieは、Reeracoen Groupのアジア全域におけるコンテンツ制作と市場分析を統括しています。Reeracoenの各分野に精通した採用コンサルタントと緊密に連携しながら、採用データ、給与水準、労働市場の動向を、企業やプロフェッショナルが活用できる実践的な情報として発信しています。その活動には、「Salary Guide」「Hiring Pulse」「Hiring Manager Survey」をはじめとする、Reeracoen独自の調査データが活用されています。
参考資料
免責事項
本記事は、公開時点で信頼できると判断した公開情報およびReeracoen独自の調査に基づき、Reeracoenが作成したものです。一般的な情報提供および教育を目的としており、専門的なキャリアアドバイスを提供するものではありません。本記事で引用しているHiring Manager Surveyはシンガポールの企業を対象とした調査です。他の市場で調査結果を参考にする際には、その市場背景の違いをご考慮ください。




