2026年 国際的な仕事で日本人プロフェッショナルに求められるAI・デジタルスキル

September 25, 2026 14:45

 

「求人情報に書かれている『AI・デジタルスキル』とは、プログラミング能力やデータサイエンスなど、習得に何年もかかる専門的な技術を指す」という根強い思い込みがあります。そのため、本来であれば十分に採用候補となり得る人材が、応募をためらってしまうことがあります。

 

しかし、実際に多くの企業が求めているのは、そのような高度な専門スキルではありません。候補者の認識と企業側の期待との間にあるギャップによって、本来得られたはずの機会を逃している人も少なくないのです。

 

「Reeracoen's Singapore Hiring Manager Survey 2025/2026」では、Reeracoenが調査したシンガポールの企業が研修分野として最も重視しているのは、デジタル・AI関連スキルであることが分かりました。これは、プロジェクトマネジメントやデータ分析など、調査対象となったほかのすべての分野を上回っています。

 

ただし、企業が意味するデジタル・AIスキルは、多くの候補者が想像するよりも範囲が限定されており、より実務的なものです。そのため、このギャップを埋めることは、想像するほど難しくありません。

 

企業が求める「デジタル・AIスキル」とは

企業が求めているのは、必ずしも専門的な技術力ではありません。重視されるのは、一般的なデジタルツールやAIツールを使って、実際の業務をより速く、より良く進められるか、そして、その活用方法を具体的に説明できるかという点です。

例えば、AIツールを使ってレポートのたたき台を作成したり、調査結果を整理・要約したり、繰り返し発生する作業を自動化したりした経験があれば、技術的なバックグラウンドがなくても、企業が求めるスキルを十分に示すことができます。

企業が一貫して見ているのは、知っているツールを並べるだけの候補者と、ツールを使って実際に何をしたのかを説明できる候補者との違いです。

履歴書に「AIツールの使用経験あり」と書くだけでは、単なる自己申告にとどまります。一方、ツールを使うことで、ある業務をどのように速く、または効率的に進められたのかを具体的に示せば、それが、自分のスキルを示す具体的な裏付けになります。


 

2026年に本当に差がつくスキル

・AIを活用した文章作成・リサーチ

AIツールを使って文書の下書き、要約、構成整理などを行うスキルです。ただし、生成された内容をそのまま使用するのではなく、自ら内容を精査し、修正・改善する力も求められます。

 

・実務で活かせるデータリテラシー

正式なデータサイエンスの知識ではなく、表計算ソフトやダッシュボード、基本的なデータツールを使い、実際のビジネス上の課題に答えを出せるスキルです。

 

・業務自動化の基礎スキル

繰り返し発生する業務を見つけ、シンプルなツールやAIアシスタントを使って、手作業にかかる負担を軽減するスキルです。

 

・国境を越えたデジタルコラボレーション

共有のデジタルツールを使い、異なるタイムゾーンや言語をまたいで円滑に仕事を進めるスキルです。単にそれぞれのツールを使えるだけでなく、国や地域を越えた協働の中で活用できることが重要です。


 

職種によって異なる活用例

これらのスキルの現れ方は、実際に担当する業務によって異なります。他の人の活用例に自分を無理に当てはめるのではなく、自分の業務の中でどのように活用しているかを捉えることが大切です。

・人事
AIツールを使って面接質問のたたき台を作成したり、複数の面接担当者から寄せられた候補者へのフィードバックを要約したりする。

・営業
顧客との商談前に、CRMに搭載された分析機能やAI要約ツールを活用し、より具体的な顧客情報を短時間で整理する。

・マーケティング
AIツールを使ってキャンペーンコピーの複数案を作成したり、各市場向けにローカライズしたりしたうえで、最も適した案を選び、さらに磨き上げる。毎回ゼロから作成する必要がなくなります。

・財務・経理
表計算ソフトによる自動化やAIを活用した分析によって、定期的なレポート作成を効率化する。その結果、人による判断が必要な分析や解釈に、より多くの時間を充てられます。

・オペレーション
デジタルツールを使って業務上のボトルネックを特定したり、チームやタイムゾーンをまたいで繰り返し発生する調整業務を自動化したりする。


 

同じスキルでも、伝え方で変わる―2つの例

海外拠点間の調整を担うポジションに、デジタルツールの使用経験がほぼ同程度の2人の候補者が応募したケースを考えてみましょう。

1人目は、履歴書に「AI活用スキル」と「高いExcelスキル」とだけ記載しています。

一方、2人目は次のように記載しています。

 

「毎月作成するリージョナルレポートの初稿作成にAIツールを活用し、準備にかかる時間を丸1日から2時間未満に短縮しました。その後、内容を自分で精査・修正したうえで関係者に共有しました」

 

実際には、2人の経験にほとんど差がないかもしれません。

しかし、面接官が具体的に評価できる情報を提示しているのは、2人目だけです。そして、その後の面接での受け答えにも、明らかな差が生じることが少なくありません。


 

技術的なバックグラウンドがなくてもスキルを身につけ、アピールする方法

・日常業務から活用できる場面を探す

まずは、普段から繰り返し行っている業務に目を向け、AIツールやデジタルツールによって、本当に時間を短縮できる部分や、成果物の質を高められる部分がないか考えてみましょう。先にツールを選んでから用途を探すのではなく、実際の業務上の課題を起点にすることが大切です。

 

・試したことと結果を記録する

何を試し、それによって何が変わり、どのような結果が得られたのかを簡単に記録しておきましょう。その記録は、「以前一度試したことがある」という曖昧な記憶ではなく、自分のスキルを示す具体的な証拠になります。

 

・ツールではなく成果を説明する

使用したツールではなく、得られた成果をビジネスの観点から説明する練習をしましょう。「AIツールを使用しました」とソフトウェア名を挙げるよりも、「AIツールで初稿を作成することにより、レポートの準備時間を短縮しました」と伝える方が効果的です。

 

・曖昧な表現を避ける

「AIツールに慣れています」と述べるだけでは、具体的な説明を求められたときに、十分に答えられない可能性があります。一方、具体的な活用例を示しておけば、自分のスキルをより明確に伝えられます。

 

避けるべきよくある間違い

・デジタル・AIスキルは、技術職やIT系の職種にだけ必要だと思い込む

Reeracoenが調査したシンガポールの採用担当者は、特定の技術職に限らず、幅広い職種において、デジタル・AI関連スキルを最も重視する研修分野として挙げています。

 

・自分には関係のない仕事だと考える

「それはIT部門が担当することだ」と考えてしまうと、自分自身が持つスキルや対応力を、実際よりも低く見せることになります。

 

・使用できるツールだけを並べ、成果を示さない

ソフトウェア名をいくつも並べるより、いずれかのツールを使って何を達成したのか、具体的な事例を一つ示す方が効果的です。


 

英語力とAI・デジタルスキル――それぞれの役割

デジタル・AIリテラシーは、語学の準備に代わるものではありません。この2つは、それぞれ異なる役割を果たします。

英語力は、国際的な仕事に就くための基礎的な要件です。一方、デジタル・AIリテラシーは、その基礎要件を満たしたうえで、ほかの候補者との差別化につながるスキルの一つです。

今回の調査では、シンガポールの採用担当者の68.6%が、デジタル・AIリテラシーを最も重視する研修分野として評価しており、プロジェクトマネジメントの52.4%を上回りました。

これは、語学学習に加えて、デジタル・AI分野の準備にもしっかり取り組む必要があることを示しています。ただし、語学の準備よりもAI・デジタルスキルを優先すべきだ、という意味ではありません。


 

調査結果から見えるポイント

「Reeracoen Singapore Hiring Manager Survey 2025/2026」では、企業の68.6%が、調査対象となった研修分野の中でデジタル・AI関連スキルを最も重視すると回答しました。次いで、プロジェクトマネジメントが52.4%、データ分析・ファイナンシャルリテラシーが49.6%となっており、いずれもデジタル・AI関連スキルを大きく下回っています。また、76.6%が、具体的な活用事例や研修受講歴など、スキルアップを示す実績について、候補者を評価するうえで「重要」または「非常に重要」と回答しています。

 

Reeracoen Japanであなたの可能性を広げる

Reeracoen Japanのコンサルタントが、デジタル・AIツールを活用した実務経験を整理し、海外や複数の国・地域に関わる仕事への転職で強みとして伝えられるようサポートします。

転職・キャリアのご相談はこちら 

 

よくある質問

デジタルスキルを持つ人材として評価されるには、技術職の経験やプログラミングの知識が必要ですか?

いいえ。Reeracoenの採用担当者調査では、雇用主がデジタル・AIリテラシーを最も重視する研修分野として評価していることが示されています。ただし、この調査では、ツールを実務で活用した経験と、専門的な技術力を直接比較しているわけではありません。

Reeracoenの採用支援経験に基づくと、技術的な資格だけを示すよりも、実際の業務でツールを活用した具体例を示す方が、企業から高く評価される傾向があります。

 

どのようなAIツールの活用経験が、関連スキルとして評価されますか?

重要なのは、実務での具体的な活用経験です。例えば、AIを使った文書の下書きや構成整理、データツールを活用したビジネス上の課題分析、繰り返し発生する業務の自動化などが挙げられます。

どのツールを使用したかよりも、それによってどのような成果を得たかが重要です。

 

これまで仕事でAIを本格的に活用した経験がない場合、面接でどのようにスキルを伝えればよいですか?

デジタルツールやAIツールを使って改善した具体的な業務を、技術的な言葉ではなく、ビジネス上の成果という観点から説明しましょう。曖昧に「使ったことがある」と伝えるよりも、一つの具体的な活用例を詳しく説明する方が効果的です。

 

このスキルが必要なのは、テクノロジー業界の職種だけですか?

いいえ。Reeracoenが調査したシンガポールの採用担当者は、技術職に限定せず、幅広い職種において、デジタル・AIスキルを最も重視する研修分野として挙げています。

 

面接では、どの職種の活用例が最も説得力を持ちますか?

自分が実際に経験した、具体的な事例が最も説得力を持ちます。例えば、人事担当者がAIを使って面接質問のたたき台を作成した事例も、財務・経理担当者がレポート作成を自動化した事例と同様に説得力があります。ただし、単にツールを使えると述べるのではなく、その活用によって得られた具体的な成果を含めることが重要です。


 

著者について

Valerie Ong(ヴァレリー・オン) / Reeracoen Group Regional Head of Marketing

Valerieは、Reeracoen Groupのアジア全域におけるコンテンツ制作と市場分析を統括しています。Reeracoenの各分野に精通した採用コンサルタントと緊密に連携しながら、採用データ、給与水準、労働市場の動向を、企業やビジネスパーソンが活用できる実践的な情報として発信しています。その活動には、「Salary Guide」「Hiring Pulse」「Hiring Manager Survey」をはじめとする、Reeracoen独自の調査データが活用されています。


 

参考資料

Reeracoen Singapore. (2026). Hiring Managers Unfiltered: Singapore Hiring Manager Survey 2025/2026 (n=375, with Rakuten Insight)

 

免責事項

本記事は、公開時点において信頼できると判断した一般公開情報およびReeracoen独自の調査に基づき、Reeracoenが作成したものです。

一般的な情報提供および教育を目的としており、専門的なキャリアアドバイスを提供するものではありません。

本記事で引用している採用担当者調査は、シンガポールの雇用主を対象としたものです。ほかの市場に調査結果を当てはめる場合は、市場環境の違いを考慮してください。