日本の航空人材を取り巻く環境の変化: 企業が知っておきたい「特定技能」制度

October 29, 2026 09:00

空港グランドハンドリング(航空機の地上支援業務)や航空機整備で外国人材を採用する際の制度について、最後に詳しく確認したのが1~2年以上前であれば、当時の情報はすでに古くなっている可能性があります。

航空分野の「特定技能」制度自体は、2019年4月の制度開始時から対象となっており、新しい制度ではありません。ただし、制度の具体的な運用内容は継続的に見直されています。 2026年1月には分野別運用方針が改定され、さらに同年7月17日には運用要領も改定されました。

そのため、一度確認すれば変わらない固定的な制度だと考えるのではなく、最新情報をその都度確認することが重要です。

本記事では、出入国在留管理庁(ISA)および国土交通省(MLIT)の情報をもとに、航空分野の特定技能制度がどのような業務を対象としているのか、最近どのような変更があったのか、そして外国人材の活用を航空業界の人材戦略に取り入れる際に企業が押さえておきたいポイントを整理します。

 

新しい制度ではなく、継続的に見直されている制度

特定技能の在留資格は、2018年12月の入管法改正を受けて2019年4月に創設され、航空分野も当初から対象分野の一つです。

重要なのは、制度そのものの新しさではなく、運用内容が継続的に見直されている点です。

国土交通省の航空分野のページによると、分野別運用方針は2026年1月23日に改定され、受入れ機関や外国人材が満たすべき具体的な要件を定める運用要領も、2026年7月17日に一部改定されています。出入国在留管理庁の航空分野ページも、同年7月の改定内容を反映しています。

この事からも、制度を採用ルートとして検討する際には、企業が最新の運用要領を確認する必要があることが分かります。

出入国在留管理庁のページでは、新たに追加された業務の仕事内容について「準備中」とされている項目もあり、制度が今も見直され続けていることがうかがえます。

過去に確認した情報だけに頼らず、最新の要件をその都度確認することが重要です。

 

特定技能で対象となる業務

出入国在留管理庁によると、航空分野の特定技能は大きく2つの業務区分に分かれ、それぞれに特定技能1号と特定技能2号があります。

①空港グランドハンドリング:

特定技能1号では、有資格の指導者やチームリーダーの監督のもと、航空機の地上走行支援、手荷物・貨物の取扱い、航空機への手荷物・貨物の積み下ろし、機内・機外の清掃、旅客対応、機内食の物流、航空燃料の取扱いなどを行います。特定技能2号では、同じような業務領域において、指導者やチームリーダーとして各工程を管理する立場で業務を担います。

②航空機整備:

特定技能1号では、運航整備、機体整備、装備品・エンジン整備などが対象です。特定技能2号では、同じ整備分野で、より専門的・技術的な業務を自らの判断で行うことが求められます。

いずれの業務区分でも、特定技能1号と2号の違いは、概ね「監督を受けながら業務を行う立場」と「指導・監督、または専門的な判断を担う立場」の違いとして捉えることができます。

採用した人材を自社のチーム内でどのような役割に配置するかを考える際にも、参考になる考え方です。

 

受入れに必要な主な要件

出入国在留管理庁は、特定技能人材の受け入れについて具体的な要件を定めています。企業がこの制度を利用するには、在留資格だけでなく、採用する人材や受け入れ企業の双方が一定の条件を満たす必要があります。

  • 技能試験:特定技能1号では、原則として航空分野の特定技能1号評価試験に合格する必要があります。ただし、関連する技能実習を良好に修了している場合は、試験が免除されます。特定技能2号では、特定技能2号評価試験、または認定された航空従事者技能証明が必要です。航空機整備については、さらに専門的な整備業務で3年以上の実務経験が求められます。

  • 日本語能力:特定技能1号では、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)A2.2以上、または日本語能力試験(JLPT)N4以上が必要です。関連する技能実習を良好に修了している場合は、同様に免除の対象となります。

  • 直接雇用のみ:出入国在留管理庁は、この分野の雇用形態を直接雇用と明確に定めています。派遣社員として受け入れる仕組みではありません。

  • 受入れ機関の要件:企業は、対象となる空港で事業を行うことを認められた空港管理者、許可を受けた航空運送事業者、国土交通省の認定を受けた航空機整備事業者(またはその業務の委託先)など、所定の条件を満たす必要があります。また、国土交通省が運営する航空分野特定技能協議会に加入し、協議会の活動に協力することも求められます。

  • 受入れ人数の上限:出入国在留管理庁の航空分野ページでは、2029年3月末までの特定技能1号の受入れ見込数の上限として、全国で4,900人が示されています。これは企業ごとの割当人数ではなく、全国全体での受入れ上限であり、特定技能1号の受入れに適用されます。

この制度は、単に外国人材を採用しやすくするための仕組みではありません。外国人材と受入れ企業の双方に具体的な要件が定められた制度です。

 

航空業界の人材戦略で企業が押さえるべきポイント

特定技能制度は、航空業界の企業にとって、外国人材を採用するための選択肢を一つ増やすものです。特に、必要な技能が明確で、試験によって確認できるグランドハンドリングや航空機整備の対象業務では、有効な採用ルートになり得ます。

ただし、人員計画そのものが不要になるわけではありません。試験、日本語能力、直接雇用、協議会への加入といった制度上の要件を、人材の採用・受入れ・定着のプロセスに組み込む必要があります。

また、外国人材を単なる人員補充として捉えると、オンボーディング、監督体制、職場でのコミュニケーション支援といった実務上の課題を見落とす可能性があります。特に、制度上求められる最低限の日本語能力で入社する人材については、職場でのコミュニケーション支援が重要です。

また、特定技能1号から2号への移行は、単なる制度上の違いではなく、キャリア形成の観点からも考える価値があります。

特定技能1号として監督を受けながら働き始めた人材には、その後の試験や資格取得、必要な実務経験を通じて、特定技能2号のレベルへ進む道があります。

この制度を継続的に活用するのであれば、1号人材を固定的な役割として捉えるのではなく、特定技能2号への移行も含めて人員計画を考えることができます。

 

採用計画に組み込む前に確認したいポイント

  • 採用を決定する前に、最新の対象要件や法令・運用上の要件を、出入国在留管理庁や国土交通省、または在留資格・入管手続きに詳しい専門家に直接確認しましょう。2026年7月の改定が示すように、制度の運用内容は変更されることがあります。本記事は、各社の具体的な状況における最新の運用要領を確認する代わりとなるものではありません。

  • 自社が受入れ機関として必要な条件をすでに満たしているかを確認しましょう。対象となる空港管理者または航空運送事業者としての要件、必要に応じた国土交通省の認定、協議会への加入などを確認したうえで、実際の採用ルートとして検討する必要があります。

  • 監督体制を事前に整えましょう。特定技能1号は、明確に監督を受けながら働くことを前提とした制度です。人員数だけでなく、指導を担える有資格者やチームリーダーを配置できるかを確認する必要があります。

  • 制度上求められる日本語能力に応じた、言語面・オンボーディング面の支援を用意しましょう。JLPT N4やJFT-Basic A2.2は基礎的なレベルであり、業務上十分な日本語力を意味するものではありません。実際の職場では、適切なコミュニケーション支援が引き続き重要です。

  • 特定技能1号から2号への移行を、初期採用だけでなく、人材定着や育成計画の一部として考えましょう。

よくある質問

航空分野の特定技能制度は、2026年に始まった新しい制度ですか?
いいえ。特定技能の在留資格は、2018年12月の入管法改正を受けて2019年4月に創設され、航空分野も当初から対象となっています。2026年に変わったのは、分野別運用方針が1月に改定され、さらに詳細な運用要領が7月17日に一部改定された点です。

特定技能で対象となる航空業務は何ですか?
出入国在留管理庁によると、大きく2つあります。空港グランドハンドリング(航空機の地上支援、手荷物・貨物取扱い、機内清掃、旅客対応、機内食物流、燃料取扱いなど)と航空機整備(運航整備、機体整備、装備品・エンジン整備など)です。それぞれに、監督を受けながら業務を行う特定技能1号と、指導・監督または専門的な判断を担う特定技能2号があります。

航空分野の特定技能人材を、人材派遣会社や派遣契約を通じて受け入れることはできますか?
できません。出入国在留管理庁は、この分野の雇用形態を直接雇用と定めています。派遣や一時的な雇用形態は、この制度の対象となる雇用形態ではありません。

特定技能人材を採用すれば、航空業界の人手不足を解決できますか?
それだけで解決できるわけではありません。特定技能人材を受け入れる場合も、企業は制度上の要件を満たし、適切なオンボーディング、監督、育成支援を行う必要があります。

この制度の活用を検討する企業が、最初にすべきことは何ですか?
まず、出入国在留管理庁、国土交通省、または資格を持つ専門家に、最新の対象要件や法令・運用上の要件を確認してください。2026年だけでも運用内容は2回見直されており、本記事は個別の状況に応じた最新ルールの確認に代わるものではありません。

 

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※特定技能制度に関する在留資格・法令上の詳細については、出入国在留管理庁、国土交通省、または資格を持つ専門家に直接ご確認ください。

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著者について

Valerie Ong(ヴァレリー・オン)/ Reeracoen Group Regional Head of Marketing

Valerieは、Reeracoen Groupのアジア全域におけるコンテンツ制作と市場分析を統括しています。Reeracoenの各分野に精通した採用コンサルタントと緊密に連携しながら、採用やオンボーディングに関する知見を、国際的に事業を展開する企業が日本でチームを構築する際に活用できる実践的な情報として発信しています。

 

翻訳について

本記事は、Reeracoen Japan向けに英語で作成された原文をもとに、日本語向けにローカライズしています。

 

参考資料

  • 出入国在留管理庁「航空分野」(2026年7月17日時点)

https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/aviation.html
※「詳細情報」欄には、特定技能1号受入れ見込数(2029年3月末までの受入れ上限)として4,900人と記載されています。

  • 国土交通省「航空分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格『特定技能』)」

https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr19_000011.html

 

本記事は、出入国・在留資格・法務に関する助言を目的としたものではありません。企業は、最新の対象要件や法令・運用上の要件について、出入国在留管理庁、国土交通省、または資格を持つ専門家に直接ご確認ください。